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あったかい毛布にくるまれて、朝子は目を覚ました。
横にはこの2週間で見慣れてしまった亮太の寝顔。 長い睫毛に縁取られた瞳に、朝子は惹かれてつきあい始めたのがきっかけだった。 同じサークルで、何となく仲の良かった亮太。 朝子はそんな亮太から2週間前に告白されて、何となくつきあい始めた。 容姿は欧米人っぽくて、実年齢よりも大人に見える彼。 けれど、天然パーマのやわらかい髪の毛が亮太のたまに子どもっぽい性格が出ている気がして、朝子は気に入っていた。 何となく、何となくが続いて、そのままつきあっているが、朝子は今、幸せだった。 初めて亮太の家(学生だから、アパートだけど)にお泊まり。 くすぐったいような、けれど、あったかいような。 心がふんわりしていることに、朝子はとても満足していた。 そんなことをぼうっと考えていると、もぞもぞと隣が動いた。 「りょうた?・・・起こした?」 声を掛けてみるが、起きたような気配がない。 朝子は苦笑しながら、亮太を起こさないようにベッドから抜け出す。 シャワーでも浴びて、愛しいこの男に朝食でも作ってやろう、と。 「良い匂いがする」 突然後ろから声を掛けられ、朝子は驚いて振り返った。 フライパンで卵を炒めていたので、後ろの気配が読めなかったのだ。 「おはよう、亮太」 「早いな・・・。起きてたんだ」 あくびをかみ殺しながら、亮太は目をこする。 「シャワー浴びてくれば?」 「そうする」 ガシガシと頭を掻き、浴室へ向かう亮太を確認して、朝子は料理にもどる。 実は、朝子は料理が大の苦手だったりする。 今日のコレだって、普通の人ならなんて事ナイ朝ご飯だが、朝子にしてみれば彼女の会心作だ。 ・・・・例え、トーストにサラダ、オムレツのつもりが失敗してスクランブルエッグになってしまったとしても。 もぐもぐと口を動かす亮太を見ながら、朝子は首をかしげた。 どうも機嫌がよろしくないように見える。 何となく表情も良くない。 「ねぇ」 「・・・・・・なに?」 「どうしたの?」 意を決して、朝子は聞いた。 箸を置いて、食べるのもやめる。 「・・・・・・」 亮太も、それに習って、口の中に入っていた物を飲み込んだ。 「別れて?」 「・・・・・え?」 唐突に発せられた言葉に、朝子の思考回路はショートしそうだった。 「あ、なん、で?」 「いや、さー・・・」 「だって、昨日まで普通だったし」 「・・・うーん。そーいうことじゃないんだよな」 「じゃ、どういうことなの?」 訳が分からなくて、少し前のめりになりながら亮太に訊く。 「思ってたのとさ、違うんだよね」 亮太の溜息がもれる。 溜息を吐きたいのはこっちだ、と朝子は思った。 何が言いたいのか、さっぱり意図がつかめない。 「朝子はあんまりわかんなかったかもしれないけど」 「・・・」 「俺の思ってたのと、違うんだよなー」 「・・・なにが、よ?」 「もっと華奢だと思ってたし、胸だってもっとあると思ってた」 あまりの言葉に、朝子は目を丸くした。 どう答えて良いのかわからない。 「ホラ、お前さー、服来てるときはすっげぇ細く見えるのな」 箸でスクランブルエッグをつつきながら、たわいない話でもするように言葉を紡ぐ亮太。 「でもさ、実際。見て、セックスすると全然違うだろ」 今まで笑ってた口元が、微妙に引きつる。 「それってさー、なんか。なんてーか、詐欺じゃねー?」 呆れたように、好き勝手に言ってくれる亮太に、朝子は声が出なかった。 「カラダの相性って大事って言うし」 「あ・・そ・・・・」 「ってことだからさ、帰ってくんね?」 「あーうん。そーだね。かえる」 「そ。あ、飯、さんきゅ」 ぼんやりとしたまま立ち上がり、化粧もしてないまま荷物を持つ。 荷物といっても、バッグ一つで量はない。 何も考えられなくて、何も考えたくなくて、朝子は何も言わずに亮太の家を出た。 亮太も何も言わず、ただ目の前にある朝食を口に運んでテレビを見ていた。
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